さかなの名前珍名②

 想像以上に面白い名前の魚がいる。
 標準和名でなぜこんな名前をつけたのか、不思議にさえ思われるものや、考えられないような傑作な方言名を示そう。

 まず、標準和名の傑作のトップバッターは、イソギンポ科のヨダレカケ。別にヨダレカケをしているような姿に見えないのに、不思議にさえ思える名です。

 イソギンポ科 「ヨダレカケ」


また、スズキ科のオヤニラミは目の後方にあたかも目と同じような斑紋があることからヨツメウオという方言があるが、四つ目の魚などいるわけがない。

 さて、魚の方言にはその魚の習性や特徴をよくあらわしているものも少なくない。背鰭や胸鱒に毒腺の発達しているミノカサゴは、角を出していることからか方言でヤマノカミ。サンゴ礁を群舞するチョウチョウウオにはオドリコ。イソギンチャクと共生することで広く知られているクマノミは、ハチマキとかチンチクリと呼ばれている。クマノミ類は頭部に白い一本の帯があるので、ハチマキというのは当をえているが、チンチクリとはどうしていうのか、その習性にもあてはまるものはないようだ。
 タカノハダイ科のミギマキは、昔、色あざやかで常に濃艶な姿をしたオケイという女がいて、これによく似ていることからオケイサンの名がつけられた。また同科のタカノハダイは、ミギマキに対してヒダリマキの方言がある。そして、タカノハダイを高知県柏島でオカシカウオと呼ぶのは、ヒダリマキをいいかえて名づけられたものと思うが、なかなか芸の細かい方言といえよう。
 このほか、カゴカキダイを同じ柏島でオトノサマというが、これもカゴカキにひっかけた方言と思える。このように方言と標準和名には、なんらかの関係のあるものが多いのだが、なかには習性とは全く正反対の方言がつけられているものもある。その一例にネンブツダイがある。
 ネンブツダイの仲間は、自分の口に卵をくわえ膵化するまで保護するので有名です。孵化した稚魚は自由に生活出来るまで、かなりの間親魚のそばから離れない。親魚は椎魚が外敵から襲われるといそいで口の中に椎魚を収容するが、まちがっても食べない。こんなに豊かな父性愛があるにもかかわらず、横浜の方言ではオンシラズという。最近人間にも見られないような親子関係のあるこのネンブツダイ、さぞかしこんな方言を耳にしたら目くじらをたてて怒ることだろう。

 次に、標準和名と全く関係のないと思われる傑作な方言を二、三紹介しよう。
 イソギンポ科のクモギンポは、どういうわけか和歌山県白浜でテガミノオッサンとか、ユウビンなどといっている。まさかユウビン屋のオッサンに似ていたからつけられたとは思われない。

 イソギンポ科「クモギンポ」


 最後にフグ科のサバフグは宮津でサンキュウという。なんだか駄洒落のようで恐縮だが、みな事実です。

さかなよもやま話