さかなの名前珍名③


 コイの親類のアカザは、大分県宇佐部でアカヂョウチンという。この魚は徳島県ではオイシャハンともいう。なんだか一杯飲み屋で飲んで、医者にかかるような呑兵衛がつけたような方言です。

 カジキの仲間のバショウカジキは、鹿児島でアキタロウといい、ベラ科のキュウセンを石川県宇出津でオオアクビという。これらは、なんだか怠け者がつけたような方言です。
 スズキ科のアズマハナダイは三崎でトシゴロ、高知県須崎でチュウチュウという。三崎と須崎ではかなりの距離がある。だが二つをにらみ合わせると、トシゴロの娘がキスでもしているような方言があるのは、よほどこの魚、熱烈な愛情の持ち主なのだろうか。

スズキ科の「アズマハナダイ」


 オジサン、オバサンの方言をもった魚がいること、人にまつわる名がかなりあることは前にも書いたが、メカジキやマカジキは和歌山県でシュウトメというし、オキアジのことを同県田辺ではよほどぎらぎらしているのかメッキノオバサンという。おばさんにはたいへん失礼だが、この魚、高知県甲の浦ではこともあろうにバカという。

 シタビラメの仲間のツルマキは、志賀島ではやはりオバサンに関係があるのか、サザンガバアバアという。バアサンの意味はわかるものの、なにがサザンガだかわけのわからぬ方言です。
 わけのわからぬついでに同じシタビラメの仲間のササウシノシタは、魚だからタバコなど吸うまいに高知県須崎でタバコノミという。海底で砂中の餌でも食べ、はき出した砂をタバコの煙と見立ててつけた名としか思えぬ方言です。

 オバサン、オバアサンなど女性系の万言を書いたが、よく探して見ると、どうしてどうして男性系の方言もかなりある。発光魚として知られているマツカサウオは小田原、江の島でタイノムコノゲンパチ、出雲恵雲村でタイノハチロオという。ハチロオでもゲンバチでも、これは実際人名としてある鯛の婿さんのゲンパチかハチロオに、顔が似ていたにちがいあるまい。
 前記のバショウカジキを富山でカンヌシ、カゴカキダイを柏島でオテラサンというかと思えば、スズメダイを雑賀崎、淡路でオセンゴロシというように、すさまじい方言もある。

 「スズメダイ」


 一方、淡水魚で知られるゼニタナゴは、昨今はほとんど全滅し保護がさけばれているが、関東一円でオカメ、東京でオタフクと実に福々しい名をもらっている。またキントキダイ科のキントキダイは福岡でウマヌスット、シイラは仙台、小名浜、熊本でマンビキと呼ばれている。
 このように方言を見ていくと楽しいもの、恐ろしいものなどきりがないが、標準和名オシマイという魚もいる。

さかなよもやま話

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