マンボウ

 マンボウは体長二・五㍍、体重八〇〇㌔にもなる大型魚なのに、いたってのん気者。
 南米特産のナマケモノと並んで水陸の差はあれ両横綱といえる。体の後半部はあたかも切り取られたかのようになっており、頭だけの魚を思わせるうえ、大きな背鰭と尻鰭を交互にゆっくり動かし、実にゆうゆうと大洋を泳ぎまわっているからである。
 そのスピードは大変おそく、ときには昼寝でもきめこんでいるかのように海面に浮かんでいる。そのため洋の東西を問わず、渓流記の中には必ずといってよいほど、この物ぐさマンボウのエピソードがある。

 漂流中、明けても暮れても物影一つない大海原に、突然ポッヵリ大きな円板状のものが見えかくれする。だれもがこれを浮き木と思い、近よると実に相違してマンボウである。久しぶりの獲物なので捕えようとすると、丸い小さい目で助けを乞うようなしぐさをするので見逃してやったら、数日中にそのあわれみが神に通じたのか突然、船があらわれて救助された、というのが大体の共通したストーリーである。
 ぼんやりした目だから浮き木に見えたのかというと、そうでもない。東北地方の方言では、マンボウをウキギと呼んでいる。「浮き木」とも「浮き亀」とも書くが、いずれもマンボウの性格をよくあらわした呼び名といえよう。

 マンボウは、フグの仲間に近いマンボウ科 マンボウ属の魚で、この属にはゴウシュウマンボウと、日本近海にも広く分布しているマンボウの二種が知られている。頭だけのような体つきなので、英語ではヘッド・フィッシュと呼ばれている。

 しかし、決して頭だけで生活しているのではなく、背鰭、尻鰭、胸鰭と普通の魚と同じような器官をもっている。ところが、それらの鰭の位置が普通の魚とちがうので、誤解をまねいているに過ぎない。とくにマンボウの生活史を見ると、これらの鱒の移動の様子がはっきりわかる。

 マンボウの卵は三億近くもあるといわれ、これが大洋の表面を浮遊している。孵化後間もない稚魚は、コンペイトウを思わせるスタイルで大きい目に大きいトゲが体表にある一種奇妙な姿をしているが、ちゃんと普通の魚のように尾鰭はついている。そのため、昔の研究者はこの稚魚をマンボウとは全く別種とし、またこの時期よりさらに成長して体が球状となり背鰭と尻鰭が後方に発達したものも別種と考え、それぞれ別の学名をあたえていた。

 しかし、この時期を越してさらに成長すると体高が低くなり、長楕円形で左右に平たいマンボウになることから、マンボウは幼時にはちゃんとした尾鰭のある普通のフグの形に近い魚であることがわかった。

さかなよもやま話

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