ムツゴロウ

ムツゴロウ

 ムツゴロウといっても北海道の「ムツゴロウ動物王国」に住んでいる畑さんの事ではない。九州一帯、とくに有明海の入江の干潟にいる浅い泥海にすむハゼの一種のムツゴロウのことです。



 ムツゴロウは、スズキ目 クモハゼ科という大きい科に含まれるが、ムツゴロウ属にはムツゴロウ一種しか知られていない大変小さいグループです。この魚は種名にChinensis(シネンシス=中国の意味)とつけられているように、トビハゼと同じく中国で初めて記録された魚です。
 日本での分布は九州有明海、諌早湾、八代湾ですが、このほか朝鮮の南西岸から中国全沿岸、マレー半島、ビルマなどと、とびとびにすみついている。
 トビハゼより大型で、最大のものは体長約二十㌢、普通十四、五㌢で五十㌘くらいのものが多い。
 人の腰まで沈むような泥海に、出口が二つあるY字状の直径三、四㌢の穴を掘ってすんでいる。同居生活を好み、二尾、ときには三尾もが一つの穴に生活している。潮の満ちているときは、この穴ぐらで生活しているが、いったん潮がひくと穴から飛び出し、子供たちが泥遊びでもするかのように、干潟の上を胸鰭を利用して跳んだりはねたり、群れを作って遊んでいる。そして、なにかに驚いたり人が近づくと、あわてて穴の中に逃げ込んでしまう憶病者です。
 産卵期は六月上旬から八月上旬、トビハゼと同じように穴の中で産卵する。そして、産室になった穴の中には、一㍉前後の楕円形の美しい卵が数千個も、泥壁の面をおおうように付着しているといわれている。
 この魚も多くの保護習性のある魚と同様、雄は半月近くも自分の卵を保護するが、雌は卵を産むと薄情にもただちに外に出るという。まさに産みっ放しなので、地方の人々は〃ムツ(ムツゴロウのこと)はカアチャンの顔知らず″とさえいう。
 子魚は最初のうちは、普通のハゼのように中層を泳いで、動物性プランクトンを食べて育つが、三㌢くらいになると、親と同じ形になり食性も藻食性になってくる。
 さて、浅い泥海に生息しているので、ムツゴロウの漁獲法は一風変わっているものが多い。イタアンペという木鍬でムツゴロウの穴を掘りかえして捕獲したり、大の板に片ひざをついて桶をのせ、片足で泥をけってすべるようにしてムツゴロウを追う。泥んこになってムツゴロウを追う漁師の姿は、有明海でしか見られない風物詩の一つです。
 ムツゴロウは形がよくないのできらう人がいるが、肉は白身でかば焼きにしたり、みそ田楽にしたりして好まれる魚です。



 余談だがムツゴロウは睦(むつ)五郎と書かれ、一見、人の名前のようだが、ムツっこいゴロ、すなわち脂っぽいハゼという意味だそうだ。

さかなよもやま話

LINK